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2026年3月16日
【資源循環よもやま話】ナフサとは?~2026年の今起きていることを踏まえて解説

こんにちは。EBCの広報担当です。
最近、ニュースで「ホルムズ海峡」や「中東情勢」といった言葉と一緒に、「ナフサ」という言葉を見かけることが増えました。
ただ、ナフサと言われても、すぐにイメージがわく方はあまり多くないかもしれません。ガソリンや灯油のように日常生活で直接目にするものではありませんし、ポリエチレンやポリプロピレンのように製品や素材の名前として広く知られているわけでもないからです。
けれど実は、ナフサはプラスチックや化学製品の世界では、とても大切な原料です。
2026年2月以降、ここ1カ月の報道では、ホルムズ海峡をめぐる緊張の高まりを背景に、アジアのナフサ市況に上昇圧力がかかっていることや、その影響が合成樹脂の価格にも波及しうることが繰り返し伝えられています。
海外の出来事のように見えても、実は私たちの身近な素材の上流につながっている。
そこが、いまナフサという言葉が注目されている理由のひとつです。
そこで今回の「資源循環よもやま話」は、ナフサとは何かという基本的なところから、なぜ今ニュースで取り上げられるのか、そして資源循環の視点からどう見ればよいのかについて、お伝えします。
ナフサとは?
ナフサ(naphtha)は、原油を精製するときに取り出される石油製品のひとつです。新聞記事では「粗製ガソリン」と表記されていることがあります。
石油製品と聞くと、ガソリン、灯油、軽油などを思い浮かべる方が多いかもしれません。これらは燃料として使われるイメージが強いですが、ナフサは少し役割が異なります。石油化学の世界では、ナフサは「燃やすためのもの」というより、「ものをつくるための原料」として使われることが多い存在です。
石油化学工業協会の資料によると、ナフサはガソリンに似た透明な液体で、石油化学製品の原料の中心になるものと紹介されています。
ナフサの「上流」と「下流」
まず、油田から採掘された原油が貯蔵所を経て石油精製工場に運ばれます。石油精製工場では、蒸留塔で石油ガス、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油など大まかに分けられます。
先ほどの工程で蒸留によって得られたナフサは,パイプラインを通ってナフサ分解工場(石油化学製品基礎工場)へ。ナフサは熱分解されることで、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった石油化学基礎製品に変わっていきます。
ここで出てきたエチレンやプロピレンは、さらに別の工程を経て、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった樹脂になります。ほかにも、合成ゴム、合成繊維、洗剤原料、塗料原料など、さまざまな素材や製品につながっていきます。
ナフサは「燃やすためのもの」というより、「ものをつくるための原料」と言いましたが、例えば食品包装、日用品の容器、物流用フィルム、自動車部品、住宅設備などを思い浮かべるとわかりやすいかと思います。
つまりナフサは、それ自体が最終製品として目立つ存在ではありませんが、多くの素材の出発点にいる原料だと言えます。
普段、店頭で「ナフサそのもの」を意識することはほとんどありません。けれど、その先には私たちの暮らしに近いものがたくさんあります。表には出てこないけれど、実は暮らしを支える素材産業の土台のひとつ。それがナフサです。
ナフサはどうプラスチックにつながる?
流れをシンプルにすると、ナフサとプラスチックの関係は次のように整理できます。
ナフサ
↓
エチレン・プロピレンなどの石油化学基礎製品
↓
ポリエチレン(PE)・ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂
↓
包装材、日用品、自動車部品など
この連載ではこれまで、PEやPPといった素材そのものを取り上げてきました。今回は、その素材をもう一歩さかのぼって、「そもそも何からつくられているのか」を見る回だと考えていただくと、つかみやすいかもしれません。
素材の特徴を知ることも大切ですが、その上流にある原料まで見えてくると、ニュースの読み方も少し変わってきます。「樹脂価格」「原料高」「調達懸念」といった言葉が、より具体的に感じられるようになるからです。
なぜいまニュースで「ナフサ」を聞くの?
ナフサが今あらためて注目されている背景には、日本のエネルギーや原料調達が海外、とくに中東と深く結びついていることがあります。
石油連盟の資料によると、日本の原油輸入は2023年度で中東依存度が94.8%でした。また、2023年の原油輸入量のうち73.7%がホルムズ海峡を経由しています。ホルムズ海峡は、中東から日本へ向かうエネルギー輸送の重要な通り道です。
さらに、石油化学用原料ナフサについても、石油化学工業協会の統計では、2024年の輸入の73.6%が中東からの調達となっています。つまり、原油はもちろんのこと、石油化学の原料としてのナフサも中東との結びつきが強いということです。
こうした状況の中で、中東情勢が不安定になると、「原料は予定通り届くのか」「輸送コストはどうなるのか」「市況はどこまで上がるのか」といった見方が強まります。すると、その影響はナフサの先にあるエチレンやプロピレンといった石油化学基礎製品、そして合成樹脂にも及びやすくなります。
実際に国内でも、大手総合化学メーカーのエチレンの減産といったニュースが次々に報じられています。
世界のニュースが、身近な素材の話につながっている。素材の上流で何かが起きている。ナフサが注目されているのは、そのためです。
資源循環の視点からナフサを見ると?
資源循環というと、どうしても「使い終わったものをどう回収するか」「再資源化をどう進めるか」といった出口側の話に目が向きがちです。もちろん、それはとても大切です。
ただ、循環を考えるなら、入口側、つまり「そもそもどんな原料から素材がつくられているのか」にも目を向けたいところです。
現在は、プラスチックの供給の多くを、依然としてバージン原料が支えています。その上流にあるナフサの価格や供給が揺れるとき、再生材の価値や役割もまた、違った形で見えてきます。
再生材の活用を考えることと、バージン原料の動きを知ることは、別々の話ではありません。どちらも、素材が社会の中でどう使われ、どう循環していくかを考えるための大事な視点です。
そう考えると、ナフサの話は、単なる専門用語の説明では終わりません。プラスチックの上流を知ることは、資源循環をより広い視点で考える入口にもなります。
いかがでしょうか。ナフサという言葉を最初から細かく理解しようとすると、少し難しく感じるかもしれません。
でも、まずは「PEやPPといった素材のもうすこし上流にある原料」とつかめば十分です。
そうすると、ホルムズ海峡、原油、為替、合成樹脂価格といったニュースの言葉が、少しずつ一本の線でつながって見えてきます。素材の話を知ることは、その素材がどこから来ているのかを知ることでもある。今回のテーマは、そんな視点を持つきっかけになるかもしれません。
次回は、今回少し触れた「ホルムズ海峡のニュースは、なぜ世界の樹脂業界に響くのか」を、もう少し具体的に見ていきます。
参考記事:
石油化学工業協会:ナフサ分解工場 – 石油化学製品はこうしてつくる
https://www.jpca.or.jp/studies/junior/tour02.html
石油化学工業協会:石油化学用原料ナフサ
https://www.jpca.or.jp/statistics/annual/nafusa.html
資源エネルギー庁:調査の概要(石油製品需給動態統計調査)
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas
/pl004/summary.html
資源エネルギー庁:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会
(2024年8月30日)資料石油連盟「エネルギー基本計画の改定に向けて」
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/counci
/basic_policy_subcommitt/2024/061/061_009.pdf
石油連盟:今日の石油産業 2025
https://www.paj.gr.jp/pdf/today_paj2025.pdf
時事ドットコムニュース
「化学大手、エチレン減産相次ぐ 国内4基目、長期化で車部品・洗剤に波及」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026031201097&g=eco
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